- Synthesizer Vで初音ミクは使えないの?
結論から言うと、Synthesizer Vで初音ミクは使えません。
Synthesizer VとVOCALOID(初音ミク)は使用している技術が違うので、使える声のデータは共通ではありません。
各歌声合成ソフトは、専用のボイスしか使えないのです。
しかし歌声合成ソフトはさまざまな種類があり、どのソフトでどのボイスが使えるのかとてもわかりにくいですよね。
この記事ではSynthesizer VとVOCALOIDの違いに注目し、Synthesizer Vで初音ミクが使えない理由について詳しく解説します。
- なぜSynthesizer Vで初音ミクは使えないのか
- Synthesizer Vとボカロの違い
- 初音ミクを使う方法
Synthesizer Vで初音ミクは使えない
Synthesizer Vで初音ミクは使えません。
その理由は現在発売されている初音ミクのボイスバンクはSynthesizer Vに対応していないからです。
Synthesizer VとVOCALOIDは別のソフト・別の技術だから
Synthesizer Vと、初音ミクなどのVOCALOIDは作った会社や使われている技術が違うので、互換性がありません。
歌声合成ソフトでボイスバンク(Synthesizer Vでは歌声データベース)を使うためには、ボイスバンクと歌声合成ソフトが対応したものである必要があります。
次の図は、GUMIでボイスバンクと音声合成ソフトの関係を整理したものです。
Nintendo SwitchでPlayStation5のソフトが使えないのと同じです。
Switchが歌声合成ソフト、ゲームソフトがボイスバンクという関係ですね。
Synthesizer VのボイスはSynthesizer Vで、VOCALOIDのボイスはVOCALOID対応の編集ソフトでしか動きません。
Synthesizer Vは歌声の圧倒的な自然さが特徴
Synthesizer VはDREAMTONICSという会社が作った歌声合成ソフトで、2018年に発売されました。
特徴は歌声の自然さです。
歌声の合成にAIを使用しており、驚くほど人間に近いボーカルを作成できます。
重音テトが有名ですが、新しいソフトなので使えるキャラクターがまだ少ないという面もあります。
VOCALOIDはボイスバンクの多さが強み
VOCALOIDはヤマハが開発した歌声合成技術で、第1世代のソフトは2004年に発売されました。
アップデートで進化を続けており、最新は第6世代(VOCALOID6)です。
特徴は、歴史あるソフトゆえのボイスバンクの種類の多さです。
すべてのボイスバンクがすべてのバージョンで使えるわけではありませんが、現在もキャラクターは追加されています。
初音ミクが代表的ですが、GUMIやflowerなども元々はVOCALOIDです。
最新バージョンのVOCALOID6も歌声合成にAIを使用していますが、歌声の自然さの面ではSynthesizer Vが上です。
Synthesizer Vはボカロではない?
ではSynthesizer Vはボカロではないのかというと、正確にはボカロではないですが少し難しいです。
というのも、現在「ボカロ」という言葉は一般的にかなり広い意味でとらえられる場合が多いからです。
言葉の意味は時とともに変わるものです。
狭い意味と広い意味を確認します。
「狭義のボカロ」はヤマハのVOCALOID技術を使った製品
そもそも「ボーカロイド」「ボカロ」という言葉は、ヤマハが商標登録しています。
商標とは、事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するネーミングやマーク(識別標識)です。
知っておかなきゃ、商標のこと!商標をわかりやすく解説!-政府広報オンライン
(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202208/2.html )
本来であれば、ヤマハの技術を使用しているボイスバンクだけが「ボーカロイド」と呼ばれるべきではあります。
たとえば初音ミクであればVOCALOID4を使っている「V4X」と、初音ミク発売元(クリプトン)が独自に開発した「NT」があります。
V4Xは間違いなくボカロですが、「NTはボカロじゃない」という考え方も可能です。
でも、初音ミク=ボカロという考え方のほうが自然ですよね。
このように本来は技術そのものを指す言葉だった「ボカロ」がボカロを使ったキャラクターも指すようになり、定義があいまいになってしまっているのです。
「広義のボカロ」は歌声合成ソフト全般や曲のジャンル
私の考えですが、現在「ボカロ」という言葉は曲のジャンルを指す言葉に近いです。
近年CeVIO AIやSynthesizer Vなどの別の技術を使った新しい歌声合成ソフトが登場したことで「ボカロ」の定義はより一層あいまいになってしまいました。
合成音声の歌を聞いて、VOCALOIDで作られたものかどうかは普通わかりませんからね。
合成音声が歌う曲=ボカロ曲という認識が一般的になっています。
もちろん企業の権利が絡む問題なので一概には言えませんが、楽曲のジャンルとして「ボカロ曲」が確立されていると言えるでしょう。
正解はないが、作るなら違いを理解しておくべき
このように、「ボーカロイド」の正しい定義は非常に難しいです。
曲を聞いて楽しむだけなら深く気にする必要はないと思います。
「これはボカロじゃない」とケンカするのは不毛です。
ただし、作り手になりたいのであれば使うべきソフトが異なってくるので違いを理解しなくてはなりません。
Synthesizer VはVOCALOIDの技術を使っていないので、VOCALOIDをベースにしている初音ミクは動かすことができないのです。
初音ミクを使う方法
では、初音ミクを歌わせるにはどうしたらいいのでしょうか。
2024年9月現在では「初音ミク V4X」または「初音ミク NT」を「Piapro Studio」という編集ソフトで使うのが一般的です。
ただし、2024年内に「初音ミク V6 AI」が発売されることも発表されています。
順番に解説します。
「初音ミク V4X」をPiapro Studioで使う
「初音ミク V4X」はVOCALOID4の技術を使った初音ミクです。
V4Xには初音ミクの発売元(クリプトン)オリジナルの編集ソフトであるPiapro Studioが無料でついてきます。
通常版Piapro Studioは、VOCALOIDの技術を使っています。
ですのでV4Xはまごうことなきボカロです。
今初音ミクを使って楽曲制作を始めるなら、価格や汎用性、使い方情報の多さの面でV4Xが最もおすすめです。
「初音ミク NT」をPiapro Studioで使う
「初音ミク NT」は最新版の初音ミクですが、VOCALOIDの技術は使われていません。
NTには専用の編集ソフト(Piapro Studio for NT)があり、他のソフトでは使えません。
今後もアップデートがされていくようですが、今あえてNTを使う必要性はそこまで高くないです。
「初音ミク V4X」をVOCALOID6 Editorで使う必要はない
「初音ミク V4X」はVOCALOID6 Editorでも使うことができます。
ただしVOCALOID6から搭載されたVOCALOID:AI機能は使えません。
編集ソフトも最初からPiapro Studioが付属しているので、わざわざVOCALOID6 Editorを買って使う必要はないです。
「初音ミク V6 AI」をVOCALOID6 Editorで使えるかも
発売が予定されている「初音ミク V6 AI」は、おそらくVOCALOID6 Editorで動作します。
VOCALOID:AIにも対応すると考えられます。
しかしAI対応が遅かった初音ミクにAI調声が使えるようになるということは、キャラクターイメージなどに大きな影響が出るかもしれません。
VOCALOID6の歌唱の自然さにも懸念があり「絶対にV6 AIを待った方がいい」とは言い切れないです。
V4XならVOCALOID6 EditorでV6と両方使うこともできるので、あえて今買うならV4Xがおすすめです。
Synthesizer Vのキャラと初音ミクを一緒に歌わせる方法
初音ミクとSynthesizer Vのキャラが一緒に歌っている曲も多いですが、これはDAW(DTMをするソフト)上で複数の歌声合成ソフトを立ち上げることで作れます。
Piapro StudioやVOCALOID6 Editor、Synthesizer V Studio Pro(Synthesizer Vの編集ソフト)は、DAWのプラグインとして動作させることができます。
片方で作った同じ歌詞を歌わせたい場合は、いったんプロジェクトやMIDI形式で保存してもう片方にインポートすることでコピーが可能です。
DAW上で立ち上げられないCeVIO AIも、別に音声を出力してDAWに取り込むことができます。
Synthesizer Vのキャラと歌わせたいからといって、初音ミクもSynthesizer Vで使う必要はありません。
初音ミクはSynthesizer Vで使えないし、使う必要はない-まとめ
初音ミクとSynthesizer Vについて解説してきました。
まとめます。
- Synthesizer Vで初音ミクは使えない
- もともと使われている技術が異なり、ボイスに互換性がないから
- Synthesizer Vのキャラと初音ミクのデュエット曲は、別ソフトで作った音声をDAW上で組み合わせて作る
Synthesizer Vで初音ミクが使えないのはどうしようもありません。
すでにSynthesizer Vを持っているなら、新しく初音ミクを買ってPiapro Studioで使うしかないです。
ですが初音ミクだけを使いたいなら、初音ミクを買えば編集ソフトもついてきてお得です。
わざわざSynthesizer Vを買う必要はありません。
デュエットさせたいなら別々のソフトで動かせば可能です。
ぜひ作りたい曲・歌わせたいシンガーに合わせて、適したソフトを導入してみてください。
\今初音ミクを使うならこちらがおすすめ/